欲するものを簡単に手に入れられる場合とそうでない場合がある
猫の額ほどの庭に、ソヨゴが雌雄で立っている
常緑で葉が風にたなびく感じが好きなのと、居間の窓から隣家の視線が気になるので目隠しにもなるしと思い植栽したものである
ところが肝心の視線の部分が遮られないのだ
そこだけ葉が埋まらずポッカリと空いている
最初のうちは成長すればと思っていたが何年経っても一向に空いている
理由は雌木にある
雄の成長に比べて、雌が弱々しい
植木屋さんに聞くと、元々が弱い木だったのだろうという見解である
隣の雄に養分を持っていかれているのかもしれない
植えた時は同じくらいの背格好だったのにすでに雄は倍くらいになっている
色々手を尽くしてみたがあんまり変わらない
なんとかしたいと思いながら時間が経った
ところがそのうちに隣家の視線が気にならなくなった
理由はわからない
慣れたのか、それともまあいいやって諦めたものか
すると不思議なことにその空間が葉っぱで埋まり始めた
期待していた雌ではなく雄の葉で
偶然といえばそれまでだが、僕は必然主義者(大げさだが)なので、そこに意味を読み取ろうとする
埋まって欲しいと願っているときには埋まらず、もういいやと思ってから埋まる
これぞ欲望のパラドックスではなかろうか
よくよく考えるとこんなケースは多い
欲求の強さが実現を阻むのである
しかし強くないと実現しないのもまた現実でもある
欲望そのものに起因するものか、はたまた実現する力によるものか