めいそうえっせい

色々と心のままに

寂しくない定年 ある後輩の場合

会社の7年後輩で5歳年下の男がいる

 

なぜ2歳違うかといえば、彼が2年留年しているからである

 

彼は生真面目とおでこに、素直を右頬に、無欲を左頬に貼り付けているような人間だった

 

そんな男がなぜ2年大学を留年したかというと、あまりの本好きが嵩じて、本を読みたいばかりにわざと留年したそうだ

 

何しろ下宿の床が本の重みで抜けるかもしれないと大家に脅されたというのだからすごい

 

その量たるや4000冊を超えていたそうである

 

その彼が57歳にして会社を辞めることになった

 

定年というより、早期退職である

 

いわゆる肩たたきにあった

 

彼はその人の良さから常に出世とは無縁であった

 

きちんと仕事はこなすし、決して他から劣ることはないのだが、時にありがちなことに、無欲をやる気のなさと判断するのである

 

そんな彼は多くの同僚や後輩から慕われた

 

彼が肩を叩かれた時、僕に相談があった

 

僕は会社の言いなりになって辞める必要はないと思うと言いながら、彼の性格を考えれば頑強に抵抗など無理だろうとも思っていた

 

案の定、彼はすんなりと辞めた

 

独身だし、親の資産もそれなりにあるということで、贅沢しなければ生きて行けるだろうと考えたそうだ

 

僕は彼のような人間こそが会社の人的資本だと思っている

 

我欲のためではなく、ただ自分に与えられた仕事を忠実にやり遂げ、絶対に不正などしない

 

多くの企業はそのような社員がいかに会社にとって意味があるかを理解していないと僕は思う

 

まあでもその話はまた次の機会に譲るとして

 

彼は辞めるにあたってわざわざ上京してきてくれて僕と食事をした

 

もちろん食事代は僕が払った

 

僕は彼とずっと良い関係でいたいと思う

 

会社を辞めて一切の利害損得から離れたときに心からそう思える人はそれほど多くない

 

今ざっと思い浮かべてみて僕の場合、10人程度しかいない

 

彼は6月末で退職したが、今は、地元の人や会社関係の友人たちとのんびりした穏やかな生活を楽しく送っているそうだ

 

彼らしい生き方だなと思う