40代後半で責任ある立場を降ろされた数ヶ月後のことだ
どこの組織にも属さない不安定な立場であったがそれにも慣れた
社内の冷たい視線や憐むような態度にも慣れた
それまで全く気づかなかったことだが立場によって態度を変える
人間が実際にいることには驚いた
いわゆる風見鶏というのか権力しか見ていないというのか強い者には
へり下り権力がなくなった途端無視するかのようになる
多分本人は意識していないのだろう
自然にそのようになるのだ
だから全く責めたりするつもりもない
ああそんなものかと思った
その後定年を迎えるまでそのようなタイプの人間を多く見ることになる
営業現場には少ないが本社に多いタイプだ
営業現場は基本的に実力主義なので上に取り入ってもいずれ底が割れる
本社は逆で実力があっても上に引き上げてもらえなければ何も出来ない
実力がなくても引き上げてもらえば何とかなってしまう
これは営業現場が自分の腕で仕事ができるのに対し本社は仕事が歯車のように
なっていて自分一人では回らないためだ
上に取り入るという表現は揶揄しているようだが決して悪いことではない
ある意味自分を上手にアピールすることでもありそれは仕事にも活かされる
一面があるからだ
このことと権力の有無で態度を変えることは全く異なる
上に媚び諂って権力を握った者の中には下にそれを求める者がいる
そのような組織風土は決して良いとは言えない
多く見られるのが事なかれ主義であり上の決定を待たないと何も自分で
判断できないあるいはしない組織となる
いわゆる官僚的と言われるものだ
個々は優秀なのだが自分の立場を守りたいが故に自分で決定し行動を起こさず
上の決定を絶対的なものとして受け入れてしまう
もちろん最初はおかしいと感じるのだろうが長年そのような環境下に置かれると
周囲も同様の価値観で動いているために段々とそれが当たり前のようになって
しまう
忖度するという言葉が流行ったがまさしく官僚的人間及び組織を指す
ここでもまた2面性がある
上の意向を先回りして仕事をこなすことは悪いことではない
頭が回りよく出来る人間に見られることだ
何が違うのか
自分のために忖度する者はどんな上司の言うことや意向についても上だから
と言う理由だけで盲目的に従うだろう
仕事のためと考える者はその上司を心から信頼しているかどうかを判断して
それを決めるだろう
厳しい環境に置かれたことでそのような人間模様や仕事と組織のあり方がより
明確に分かるようになってきた
そんな頃にある仕事が命じられた
一人しかいない上司に呼び出されある製品の仕事をして欲しいと言われた
と言っても一人しかいないのでどうすべきかを考えて実行に移した
なぜそのような変化が起こったのかを後で知った
降格となってから自分がなぜそのようなことになったのかと言うクレームや
疑問が全国から本社に寄せられていたのだ
自分を降ろした上司(実は彼が判断をしたかどうかは定かではない)が
動かざるを得なくなったと言うドラマのような内容だった
と言うことで暇だった日常が一変し全国を飛び回ることになる