瞑想を始めたのは約30年前になる
きっかけは不眠症だった
不眠症になった要因は今もわからない
唐突に訪れた
そう、いきなり眠れなくなったのだ
いずれ記そうと思うがいわゆる運命というか科学的に言えば
遺伝子に刻まれていたのかもしれない
何しろ毎日が辛い
夜が怖い
眠れずに死んだケースはないと聞くが焦燥感と心身の憔悴は
日を追って強くなる
もちろん仕事どころではなくなる
営業車で駐車場に止める際にバックで止めようとするがブレーキ
をかけられない時には驚いた
車止めにタイヤが当たる前に頭はブレーキをかけろと叫んでいるが
体が言うことを聞かない
結局車止めにぶつかるようにして止まりそのまま営業には行かず
ずっと夜まで車の中で横になっていた
いつものように家で眠れない夜を過ごしていた時
多分夜中の2時か3時だったろう
ふつふつと湧き上がる怒りがあった
眠れないことに対する怒りではない
何かに対する怒りではないのだ
単なる怒り
女房に気づかれないようにそっと布団を抜け家を出た
真っ暗だ
何を思ったか車に乗った
少し走ると広くて直線の道路がある
その道をアクセル全開で飛ばした
150キロはゆうに出ていただろう
ぶつかって死んでもいいとの思いが頭をよぎった
幸い事故も起こさず家に戻りそっと布団に入りまんじりともせず
いつもの朝を迎えた
営業成績はどんどん下がり上司が心配するほどになっていた
それまでは営業所内でもエースと言っていいほどのレベルにいた
今でもその上司には感謝しているが彼は何も説教じみたことを
言わなかった
頑張れよとも言わなかった
ただ心配している気持ちは伝わってきた
歯痒かった
眠れないことで何もやる気が起きず普通のことさえ満足にできない
万全の体調ならもっともっと成績を上げられるのにと思った
ある休日の昼間
いつものように畳の部屋にゴロンと横になっていた
ふと気づいた
頭と体がバラバラになっていると
繋がっていないんだと
そして家を出て本屋に向かった
理由はない
ただ何となく
そしてある本に出会った
それは瞑想を紹介し勧めているものだった