めいそうえっせい

色々と心のままに

富士弾丸登山 その2

どの辺りか、8合か8合5灼か9合か、覚えてないがとにかく山小屋を出た僕と先輩はまた思い足を引き摺り、少しずつ歩き始めた

 

すると今度は僕がへばって座り込んでしまった

 

逆に元気を取り戻した先輩は、じゃあ先に行くよと行ってしまった

 

その時はなんという冷たい人かと思った

 

僕はしばらくしてやっぱり死ぬなと思い、また歩き始めた

 

ああ、そうだ思い出した

 

新◯合目なんていうのもあった

 

今思えば最後の最後でキツくなる登山で、細かく目印を置いてくれてたのだろう

 

それにしてもようやくと思うと5灼とか新なので心が萎えたなあ

 

僕にとっての最後で最大の難関は、のこり100メートルほどだった

 

その辺りで完全な高山病になっていたと思われる僕は、疲れ、寒さ、眠気に加えて、頭痛に吐き気で意識が朦朧としていたのである

 

ダウンを持ってこなかったら、あの錫を買ってなかったらと思うとゾッとする

 

二歩歩き、休みという具合である

 

限りなく遠い100メートルだった

 

頂上に着いた時は6時近くになっていて、もちろん御来光には間に合わなかった

 

甘いものが食べたくてお汁粉を食べた

 

大変失礼ながら薄過ぎるほどの汁粉だったが、とんでもないくらい美味しかった

 

30分と経たないうちに須走から下山した

 

帰りは1時間半くらいだったと思う

 

名前の通りすべるような下り方である

 

静岡からの帰りの電車では混雑していて、吊り革を持って立っていたが何度も気を失いそうになった

 

家に着いた時、僕は玄関に入るなりそこで倒れ込むようにして寝てしまった

 

後にも先にもあれほど大変な思いをしたことはない

 

やりきった感はあるが、いのちを懸けてやることではないと思う

 

結局30人ほどが参加したうち頂上まで辿り着いたのは数人だった

 

みな途中で下山したか、山小屋に泊まっていた

 

僕が辿り着いたとき頂上は0度だったが、この前ニュースで見たら今は5度くらいはあるそうなので、過酷度は少しは和らいでいるのかもしれない

 

あの六角の錫は記念と思ってずっととってあったが、いつ頃だか、もういいや、いい思い出だけど忘れようとノコギリで切って何かの折に燃やしてしまった

 

それもなんとなく妥当なような気がしたのだ

 

富士を決して甘く見てはいけないが、僕はこうも思う

 

見て楽しむ富士だが登ってこそ意味があると