夏休みに入ると図書館は混み合う
いつもなら昼前に行くのだが、さすがに席のないことが多いので、最近は朝一番に行くようにしている
僕にはお気に入りの座席があって、そこが空いていると嬉しい
先日、朝イチだったせいか、うまい具合にその席が空いていて、喜び勇んで座り、パソコンを開いた
僕の前の座席には、小学生の高学年か中学一年生くらいか、男の子三人ほどが固まって勉強している
時には何やら楽しそうに語らっている
そこはいわゆる図書館の中でも自由にして良い場所で、飲食や携帯なども許容されているスペースなのだ
僕が小説を書いていてしばらくすると、子供たちの仲間がもう一人やってきた
その子だけ一人イスがなくて立ったままなので、声を掛けて僕の座席の空いている椅子を勧めてあげた
その子は小さく頭を下げて座席を引きずっていって一緒に座った
三人が四人になり、また今度は女子が二人ほど加わって楽しくガヤガヤとやっている
僕はなぜか急に懐かしくなった
僕にもこんな頃があったんだよなあとつい思った
何があるわけでもなくただ楽しい
そんな時間が実はとても貴重だったんだな
僕はそんな時間を失くしてしまったのだろうか、それとも時間はあるけれども味わえる能力を失ったのだろうか
いやいや勝手に自分を決めつけることはないと思い直す
年齢に縛られる必要はない
自分の心は自分が決められるはずである
僕は僕のただ楽しい時間を十分持てるし味わうこともできる
そう思うと今がまさしくそうではないかと思える
自分が気づいていないだけじゃないか
そう思えたら無性に楽しくなってきた
その時、男の子が椅子をこっちに持ってきて「ありがとうございました」と大きな声で言いながら頭を深々と下げた
気持ちの良い朝の時間だった